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エピソード 2
このシーンの主役は、2002年1月に故郷の海域から遠く離れたワシントン州シアトル近郊で一頭だけでさまよっているのが目撃された「孤児」のオルカ「スプリンガー(A73)」です。「スプリンガー」と母親の「スートレジ(A45)」は、前年の夏に家族のもとに戻らなかったため、母子ともに死んだものと考えられていました。ところが奇跡的に、「スプリンガー」だけは生きていたのです。はじめのうち、この幼い赤ちゃんオルカの素性はわかりませんでしたが、彼女のコールを聞いてすぐに身元が判明しました。
その後、数ヶ月もの時間をかけて、「スプリンガー」を故郷に戻そうという計画が実行に移されました。「スプリンガー」はまず捕獲され、健康チェックを受けて、高速船でハンソン島のドンチョン・ベイへ輸送されました。そして、何槽もの船や観客が見守るなか、生きたサーモンを放した囲いのなかへ静かに放されたのでした。
「スプリンガー」は囲いへ放されるとすぐにコールを出し、餌も食べ始めました。その夜は、「スプリンガー」の近親も含め、多くのオルカたちが彼女の近くまで移動してきて、双方の間でドラマチックなコールが飛び交いました。翌日、オルカたちは海峡に戻ってきてドンチョン・ベイに入り、「スプリンガー」も囲いから外へ放されました。その後数日で、「スプリンガー」は徐々に環境に慣れ、ほかのオルカたちとともにリラックスして泳ぎはじめたのです。 |