ポール・スポング博士からのメッセージ

もう何年も前のこと、私は、ハンソン島にある我が家のデッキに立って、山の上にかかる満月を見ていました。透明な月の光に溢れた海が、私の前に拡がっていました。
私の心は、平和な静けさに満たされていました。そのとき、突然ある考えが降りてきたのです。
「もし、この瞬間を世界と共有できさえすれば、世界全体がこんな平和な気持ちになれるかもしれない。」

そのころ私は、テクノロジーを使いながら、オルカがどこにいて、何をしているかを知ることができるように、離れたところからオルカの声を聞く実験を始めていました。だから、あの月光の下での瞬間が、後に「ネイチャー・ネットワーク」と呼ばれるアイディアに結実するのは、ごく自然なことだったと思います。ネイチャー・ネットワークは、テクノロジーを使うことで、人々を自然に近づけることを可能にする、とてもシンプルな考えです。

私たち人間は、自然の中で生まれた以上、決してその結びつきから逃れることはできません。私たちの物理的な存在から、文化、そして美意識まで、全ては自然から始まっています。自然は、私たちを育んでくれる母であり、無くてはならないものです。それなのに人間は、母なる自然から遠く離れて生きることを、自らに許してしまいました。私たちの未来のために、そして私たちが住むこの世界の未来のために、自然とのつながりを取り戻す必要があります。私も含め、大自然に囲まれながら生きるという恩恵を受けている人間は多くありません。ほとんどの人は自然の世界から遠く離れ、孤立した都市に住んでいます。多くの人が、長い距離を旅をして、短い時間を野生の中で過ごしてでも、自然とのつながりを取り戻そうとしています。しかし、やってくる人間の数が多すぎると、自然はその本来の姿を保っていられなくなるのです。そこには、大きな矛盾が横たわっています。どうしたら、自然を壊すことなく、人と自然の距離を縮めることができるのでしょう?
オルカ・ライブが、人々がオルカの世界に近づき、その世界を私と同じように経験できるように、役立ってくれることを祈っています。私のビジョンを共有していただき、そしてこの実験を可能にして下さった、NTTデータにとても感謝してます。